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-バックナンバー- 2003年11月号

「いま、すごく充実しています」
 そう話す大和悠河さんの表情は、底から輝いていて目がくらむほど眩しい。  

月組から宙組に移籍後、初めての宝塚大劇場公演に出演中だ。柴田侑宏のオリジナル作を荻田浩一が演出した「白昼の稲妻」、そして岡田敬二のロマンチック・レビュー第15弾「テンプテーション!」。タカラヅカの薫りいっぱいの2作品である。 「初舞台から8年間育てていただいた月組を離れるのは、やっぱり寂しいものがありましたが、馴染んだ環境に知らず知らず甘えてしまうこともあったと思うんです。組替えを機会に気持ちを新たにして、又新しい挑戦ができるのは自分にとってとても幸せなことだと思いました。日生劇場の星組公演に特別出演したのも、 すごく楽しかったです。」  

5月の「雨に唄えば」である。コズモ役で生き生きと本領を発揮した大和悠河さんは実に魅力的だった。 持ち味であるカラリとした人柄のあたたかさに溢れ、色あざやかに人間模様を織り上げていた。  

ふだん当たり前のように観ていたことが、この「雨に唄えば」では、なぜこんなにもタカラヅカは欧米の雰囲気が出せるのだろうとさえ思った。  

早くから欧米と日本の融合に挑戦してきた伝統ある宝塚歌劇団の、実力あるスターたちの競演である。 洗練された個性が際だって、粋で華やかな舞台の完成度が増した。  

組という枠を超えて出演した大和さん効果は大きい。

「他の組の人たちと一緒にお稽古して、ああそうか、男役としてこういうところを勉強してこられたんだなと刺激を受けて、私もがんばろうと思いました。組によって踊る時の形とか意識するところなど、ちょっとしたことなのですが少しずつちがうのが新発見でした」

大和悠河さんの内部にも変化が起きていたのである。

大和悠河さんは8月の博多座で初めて、宙組メンバーと一緒に舞台に立った。いま充実期にある宙組トップコンビが率いる「鳳凰伝」「ザ・ショー・ストッパー」である。すでに宝塚大劇場と東京宝塚劇場で完成している作品だ。大和悠河さんは、稽古場で一からのスタート。持ち時間の大きな差を埋める作業が待ち受けていた。

「オフも仲良くできるかな、 なんて考えていたのは一瞬。お稽古が始まったとたん、みんなの完成度に追いつくことに必死でした。でも幕が開いたら、もうずっと前から宙組にいたみたいに馴染んで、仲良くしていただいて。この公演に出演できて本当によかったと思います。特に「鳳凰伝」はテーマが大きく深い作品で、 私の財産になりました。バラクという役はイメージを白や黒に決めないで、まず台本をしっかり読み込んだ上で、和央ようかさんのカラフとの男の友情を大切に演じようと心がけました。組替えを経験したおかげで、 組にこだわるのではなく、一つの作品をみんなで創り上げていくことに意義があると感じたので、来年も他の組に特別出演させていただきますが宝塚は一つの精神でがんばりたいと思います」

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