先日、阪急宝塚駅南出口から宝来橋に向かって歩いていると、ステンレス製の大きな立体作品が目にとまった。橋の袂のプレートを見て驚いた。なんと、マルタ・パンと刻まれていた。
マルタ・パン(1923〜)は、ハンガリーのブタペストに生まれ、都市や自然との調和をテーマに、様々な彫刻作品を作りつづけているフランスの女性彫刻家である。マルタ・パンの名前が一躍有名になったのは、オランダのクレーラー=ミューラー美術館の庭園に設置した『浮かぶ彫刻』(1961年)でした。以来、空間に対する独特の洞察力を持つ彫刻家として詩的で神秘的なフォルムの作品を制作し、発表している。
さて、宝塚の宝来橋にある「枠どられた風景」は、内と外とを関連づける仕組みになっており、作品の内部から形成されるフォルムが外界との融合を生んでいる。また、抽象的なフォルムが、密接な関係を保っており、そのなかから見える向こうの空間を作品のなかに取り込んでいる。
さらに素材であるステンレス・スチールは鏡面的な表情も見せるので、求心的な性格と遠心的な性格が同居し、物質と精神の関係を緊密化させている。「枠どられた風景」は、動と静の両方を包含し、心理的な空間を宝来橋に造出している作品である。