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-バックナンバー- 2006年3月号

フェアリーインタビュー

1991年、 涼風真世のトップ披露公演としてオスカル編は上演された。 その舞台で朝海ひかるさんは初舞台を踏んだ。 それから15年。 朝海ひかるさんがトップになって4年目、 6作目に当たる充実期に用意されたオスカル編は、 娘役トップ舞風りら演じるロザリーがオスカルを慕う気持ちが掘り下げられているほか、 随所に新しい試みが見られる。

「アンドレ役として星組の湖月わたるさん、 花組の春野寿美礼さん、 月組の瀬奈じゅんさんという3人の主演男役さんが特別出演され、 雪組の貴城けいと水夏希も役替わりでアンドレを演じます。 アンドレを演じられる方によって場面の雰囲気、 空気がちがってくるでしょうし、 皆さんがどういうアンドレを創り込んでいらっしゃるかでオスカルも微妙に変わり、 同じ台詞でも思い入れを込めたい部分が違ってくるはず。 当然のことですが、 アンドレもきっちりと描かれていますので、 私自身、 毎回楽しみです」

 特に宙組トップ就任が内定している貴城けい、 雪組準主役となる水夏希にとっては、 まさにアンドレは勝負の役どころ。 「あとのない切羽詰ったアンドレのオスカルへの思いが、 個人の個性、 生き様とリンクして出るでしょうから、 期待しています」

 最初にアンドレを演じる湖月わたるとは、 宙組発足メンバーとして香港公演も経験した。 朝海ひかるさんが雪組に移籍後は、 2000年のドラマシティ公演 『月夜歌聲』 や、 02年の日生劇場公演 『風と共に去りぬ』 で共演し、 06年の元旦から3日間は星組宝塚大劇場公演 『ベルサイユのばら』 ―フェルゼンとマリー・アントワネット編―にオスカル役で特別出演もした。 春野寿美礼とは同期。 瀬奈じゅんは花組時代の1年後輩。

「湖月わたるさんは身体も心も大きい方。 委ねるところは委ねられるかなあと」

 あとはお楽しみというところだが、 チケットは早々に売り切れてしまった。 でもまだ、 当日券を待つ手がある。

 観客の人生を山に例えると、 どのあたりを歩いているかによって、 宝塚歌劇の楽しみ方もちがってくる。 だからこそ、 いくつになっても観劇し続けられる。 スターにとっては、 どうだろうか。

「学年が上がるにつれて、 いろんな役をいただくようになりました。 それに取り組む姿勢は変わりませんが、 どうしたらお客様に楽しんでいただけるか、 何を望んでいらっしゃるかということを考えるようになりました。 毎回、 主役をさせていただくので、 作品の中の人物として生きていないと、 私自身を伝えることはできても、 作品をお伝えすることはできません。 どう見えるか、 どう感じていただけるかと考えることの大切さが分かっているのと、 分からないのとでは、 大きな違いがありますね。 お客様に楽しかったと喜んでいただければそれだけで充分、 という気持ちが、 学年が上がるごとに強くなりました」

 今でも想い出深い舞台と言えば、 ルドルフを演じた宙組公演 『エリザベート』 と、 丹波屋八右衛門を演じた雪組東京特別公演 『心中・恋の大和路』。 雪組に移籍してすぐの舞台だった。

「雪組に来てからは毎公演が勝負という感じでしたので、 そのスタートに当たる舞台は特に忘れられません。 当時は同期3人の役替わり公演が続き、 お互いの気持ちが手にとるようにわかった。 わかるからこそ、 支え合っていた。 自分を信じ続けられたのは、 自分一人だとは考えず、 周りの方々に支えられてきたから。 そこが宝塚のいいところ。 ライバルなんだけれども、 舞台はみんながいなければできない。 そのことを誰もが知っているのです」

 ちょっと気が早いかもしれないが、 次公演で朝海ひかるさんが演じるのは堕天使である。 ショーも人間以外の役なのだ。

「演出家の先生が私にさせたいものは何か。 それをお聞きするのが楽しみなので、 いつでも応えられる自分でありたいですね」

 下級生時代を思い出すまでもなく、 朝海ひかるさんは、 人間以外のものに心を入れられる天才なのだ。

朝海ひかるのオスカル



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インタビュアー  名取千里(なとり ちさと)  
(ティーオーエー、日本広報学会会員/現代文化研究会事務局 /宝塚NPOセンター理事

主な編著書   
「タカラヅカ・フェニックス」 (あさひ高速印刷)   
「タカラヅカ・ベルエポック」(神戸新聞総合出版センター)  
「仕事も!結婚も!」(恒友出版)


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