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-バックナンバー- 20006年10月号
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鉄斎美術館 鉄斎美術館 鉄斎美術館 鉄斎美術館

 強い日差しが降り注ぐ清荒神清澄寺の境内に凛と咲く白い百日紅。緑の木立に涼気を感じながら真夏の鉄斎美術館へ足を運ぶと、9月12日から「鉄斎の粉本−画想の源泉・摸写―」(第3回展示)が開催されています。摸写は構図や筆法、技法、色彩の研究であったことは言うまでもありませんが、鉄斎は原画に込められた思い、作者の生き方までも写し取ろうとしたことが見て取れます。宝塚南口に画廊を開いて20年という膳節子さんと、鉄斎の摸写や覚書など貴重な資料を鑑賞、粉本から鉄斎の好奇心を探りました。

膳 節子 ▲膳 節子
1945年大阪生まれ。87年宝塚南口にギャラリーアートスクエアを開廊。2007年開廊20周年を迎える。90年、「宝塚に映画館をつくろう会」を結成、自主上映活動を行ないシネ・ピピア開館後、「すみれ座」に名称を変更、上映活動を続ける。宝塚映画祭実行委員。宝塚商工会議所女性同友会会員。

鉄斎の摸写には気品を感じる

 鉄斎美術館には何回か訪れていますが、摸写を中心とした粉本展を観るのは初めてです。

以前、真贋展を観た時に感じたのは、技法をそっくりに写していても贋作は原画と品格が違うということです。粉本といわれる鉄斎の摸写は、もちろん描く動機が全く違うわけですから当然ですが、単なる摸写ではなく原画の画格までも写し取っているように思えます。渡辺崋山の「黄粱一炊図」(第二回展示)は原画がパネルで展示されているのでよくわかりますが、崋山の生き方を自分に重ね合わせながら写したと思えるほどですね。同じく伊藤若冲の「糸瓜群虫図」(第二回展示・左上の写真、膳さんの後)も原画がパネル展示されているので、対比しながら観ると鉄斎の摸写の奥深さを知ることが出来ます。勢いがあって若冲の画に感動して描いたのが解ります。若冲の作品もそうですが、鉄斎が摸写した画の中には日本では省みられず海外に流出したものもあると聞きます。摸写が残っていることで画の存在がわかるものも少なくないようです。

 鉄斎が、文人として自身の画風を確立した五、六十歳代に多くの粉本を残しているのは、技術を学ぶためというのではなく画家自身の内面や画のテーマなど、好奇心の赴くままに摸写したと言うことでしょうか。自ら紙や布を選んで表装したユニークなものも何点かあり、原画に対する鉄斎の思い入れの深さを感じながら鑑賞しました。鉄斎の粉本ならではの楽しみ方かもしれません。

 鉄斎といえば山水画というイメージで捉えていたので、人物画が多いのに驚きました。狩野探幽の「弁慶図」(第二回展示)を始め、源頼朝、豊臣秀吉など歴史上の人物は特に顔が克明に描かれ、興味深く観ることができました。

 鉄斎美術館は辿り着くまでに気持ちが高まり鉄斎さんに出会えるというアプローチがとてもすばらしいと思います。




会期 〜10月9日(月・祝)

開館時間:午前10時〜午後4時30分(入館は4時まで)月曜日休館
入館料:一般300円、 高大生200円、 小中生100円
(老人、 身体障害者手帳提示の方は各々半額)
宝塚市米谷字清シ1 清荒神清澄寺山内 
TEL0797−84−9600
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