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-バックナンバー- 2005年12月号
花組遠野あすか

因みに日生劇場での宝塚歌劇公演は『雨に唄えば』『花供養』を含めて4作。そのうちの2作に遠野あすかさんは出演したわけだ。外部出演でも02年、新宿コマ劇場公演『Cinderella』でタイトルロールのシンデレラを演じている。

「初めてOGの方々とお芝居をさせていただいたのですが、お稽古が始まると、何をしても、うまいね、かわいいね、と褒めてくださったのです。それまでは褒められたことがあまりなかったので、自分に少しは価値があるのかなと、そういうふうに思わせていただいたことが大きかったのだと思います。とても良い作品ですし公演中、ずっと幸せでした。その幸せ体験で、自分が少し変われたことに気づいたのです」

その前後をもう少し詳しくお聞きすると、宙組から花組に移籍した01年、『ミケランジェロ』の東京公演あたりから、突然のように本公演で役が与えられるようになった遠野あすかさんは、その変化に精神的に対応できるようになるまで、2年ほどかかったという。
「02年の『琥珀色の雨にぬれて』の頃は、自分で自分を認められなくて1番、気持ちが沈んでいました。でも自分が認めなかったら人に認めていただくことはできない。そんなジレンマから抜け切れない試練の時に、『Cinderella』に出演するお話をいただいたのです」

もともと表現するのが大好きな遠野あすかさんは、そういえば舞台って楽しかったな、と思い出した。

するとまもなく『エリザベート』の代役で、本公演においても大きく注目されることになった。03年1月18日、本番15分前に、急きょ、それは決定した。

「新人公演で演じていなかったら大変だったと思いますが、何しろ15分前で緊張しているヒマがなかった。私よりも周りのかたの方が心配されたのではないでしょうか。新人公演でカットされた場面は、お稽古していないので、舞台袖でぎりぎりまで台本を読んでいましたし、立つ位置もわからないという状況でしたから」

何が起こるかわからないのがナマの舞台、日頃の備えと度胸が試されるのである。
「過ぎたから言えることですが、03年は健康面であまり良くない年でした。大事なところで風邪をひいたり、ケガをしたり。自分の責任ですが、舞台に立つだけが精一杯の時もあって。でも幸せなことに再び、『Cinderella』に出演させていただけたのです」

03年12月、梅田コマ劇場公演だった。
「遅いのですが、ここ3年くらい前から、なんだかわからないのですけれど、ようやく表現できる気がしてきたんです。そんな中で、今回の『Ernest in Love』がまた、ものすごく楽しかった。今、前向きな気持ちに満ちていて、新たなスタートという気がしています」

光の玉を抱えたような輝きは、このためだったのだ。

宝塚大劇場公演『落陽のパレルモ』に続くロマンチック・レビュー『ASIAN WINDS!』では、長い手足を生かした美しいダンスシーンで目を奪う。このレビューは、モンゴルの大草原に始まり、沖縄の海、中国の大河の場面を経て、ジャパニーズ・ポップスの元祖ともいえる服部良一メドレーによる上海・銀座、そしてコリアン宮殿、フィリピンのサンパギータの花咲く教会などをテーマに、アジアの美しさを存分に見せてくれる。
「衛星放送でショーを見て、宝塚に入りたいなと思いました。それまでレッスンをしていなかったので、それから苦労しましたが、いい先生に巡り合い上級生の方々が助けて下さって、今日まで何とかやってこれました。今、音楽学校を目指している方は例え今までレッスンをしていなくても諦めないでがんばってほしいです」

素顔の、親しみやすさを感じさせる笑顔が、もうひとつの大きな魅力である。

次号のフェアリーインタビューは星組の安蘭けいさんの予定です。

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インタビュアー  名取千里(なとり ちさと)  
 (ティーオーエー、日本広報学会会員/現代文化研究会事務局 /宝塚NPOセンター理事  

主な編著書   
「タカラヅカ・フェニックス」 (あさひ高速印刷)   
「タカラヅカ・ベルエポック」(神戸新聞総合出版センター)  
 「仕事も!結婚も!」(恒友出版)


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