バックナンバーへ|TOP
-バックナンバー- 2004年10月号

5月、宝塚バウホール公演『NAKED CITY』で観た愛音羽麗さんが印象に残っている。

実在のカメラマンをモデルにしたというこの作品で、今年、新人公演を卒業したばかりの愛音羽麗さんが演じたのは、大物マフィアの、もと手下ニコラ・ダッジ。ボスの愛人と愛し合うようになったニコラは、マフィアから追われる身にー。ヒロインの心を捉えるニコラは、それだけでステキな男でなくてはならない設定だが、愛音羽麗さんはニコラを、とびきり魅力的な男に見せていた。

「私には初めてのタイプの役で、お客様も、いつもの私のイメージとはちがう、とおっしゃっていただきました。お稽古中は壁にぶつかることもいっぱいありましたが、悩んだことで、舞台に上がってから日々楽しくなったように思います。ニコラはいろんな過去をもっていて、殻に閉じこもっている人。役づくりの過程で自分自身が悩んでしまうと小さな自分の悩みになってしまい、ニコラという人物が思い悩んでいる大きさに辿り着けなくて、何度も立ち止まりました。でも、いつも思うことですが、壁にぶつかって悩むことは決して無駄ではなくて、悩めるうちは絶対に次につなげられるのだと信じていました」

そのニコラを演じていたときとは別の、あたたかな声で、愛音羽麗さんは話し始める。

宝塚歌劇90周年の今年、元旦から舞台に立った。プログラムに稽古場での写真とプロフィールが載るようになり、甘いマスクをもつ正統派男役として、的確な演技力が高く評価されている花組の新進スターに成長した。
「役の人物の半生を、自分でいろいろ考えます。それが舞台にどれだけつなげられるかわかりませんが、お芝居は大好きです。お芝居には正解が無いし、歌も踊りも芝居心があってのことですから」
 大阪府豊中市出身。幼少の頃から母親と一緒に宝塚歌劇を観劇していた。花組公演『ベルサイユのばら』を観て、進路を宝塚に決め、まっしぐらに突き進む。やがて、念願が叶い、97年、初舞台を踏んだ。

ということは、あの大震災に遭った95年に音楽学校を受験した学年なのだ。
「今思えば、受験日が近づいてもレッスンできず、他の地域の方はお稽古しているだろうなと、焦ったところもありましたね。でもあきらめなかったです」

 

次へ