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-バックナンバー- 2003年3月号

実際、やってみると舞台はすごく楽しかったし、役柄も若手向きというよりも落ち着いた大人の男性で自分の性格に合っていたので、やりがいもあり勉強になりました。初日から千秋楽まで主役を演じて初めてわかったのは、やっぱり真ん中に立つ人は特別なパワーが必要なんだということ。そうでないと下級生もついていけないんです。やはり自分は性格的に、脇で幅広くいろんな役を演じたい、真ん中の人を支えながらいくほうが合っているのではないかと、少しずつ退団のことを考えるようになりました」
 退団の決意が固まったのは、2002年7月『鳳凰伝』『ザ・ショー・ストッパー』の公演中だという。  研8で初めて演じた盗賊のトンは極めて明るいキャラクターで、舞台に登場するたびにさわやかな風を吹かせて盛り上げるのが役目だった。「自分は、落ち着きすぎだと人に言われます。だからコミカルな役ほどむつかしい。次の公演で何をさせていただけるかわからないけれども、このまま迷いながら舞台を続けるべきではないと思いました。脇の経験と真ん中に立つ経験とは、別のものなんです。将来的に真ん中に立てそうな下級生がいたら、早くからいろんな経験を積んでほしいと思います。学年が上がれば上がるほど、自分の中でスタンスが固まってきますから。主役に抜擢していただいたことで、すでに自分は脇の楽しみを覚えてしまっていることを実感しました。本当に贅沢なことだと思いますが、退団させていただくことに決めました」
 最後の男役は、椿火呂花さんが憧れていた最高の役である。「男役は自分とまったくちがうものになれるおもしろさがあります。若手が演じたからこの程度、と言われないように、しっかりと大人の男性を演じたいと思います」

 

 

 

 

 

インタビュアー
 名取千里(なとり ちさと)

  (ティーオーエー、日本広報学会会員/現代文化研究会事務局
  /宝塚NPOセンター理事
  主な編著書
  「タカラヅカ・フェニックス」 (あさひ高速印刷)
  「タカラヅカ・ベルエポック」(神戸新聞総合出版センター)
  「仕事も!結婚も!」(恒友出版)

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