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-バックナンバー- 2003年10月号

麗人という言葉がピッタリする。まさに宝塚歌劇の舞台に立つために生まれてきたような、麗しい顔立ち、立ち姿、雰囲気。軍服が似合う貴公子である。「自分自身は結構、ボケボケしているんですよ」と笑うけれども、ただ美しいだけの人など共感がもてない。親しみやすい素顔もまた、貴城けいさんがファンに愛される所以なのだ。

 9月29日まで宝塚大劇場で上演中のミュージカル・プレイ 「Romance de Paris」に、 貴城けいさんはパリ在住の広報官ムジャヒド役で出演している。貴城さんにとっては新しいタイプの役だ。

「ムジャヒドは真面目で、どこか抜けたところのある、憎めない人物です。本国でクーデターが起きて国王が捕らえられ、ムジャヒドはパリに留学中の王女を誘拐から守るために奮闘します。ムジャヒドにとって人生最大のピンチ。でも台詞にあるように、ムジャヒドは英雄ではなく、広報官なので、彼なりにがんばるしかない。 最初の本読みの時、作・演出の正塚晴彦先生から、『ムジャヒドはあかんたれだが、一生懸命で、かわいい奴』と教えていただいたので、そのイメージに自分なりのものをプラスして演じています」

正塚ワールドの魅力は、さりげない優しさをもつ人々が生き生きと描かれていること。
貴城けいさんが正塚作品に出演するのは「追憶のバルセロナ」に続いて2作目。 ショーでは「デパートメント・ストア」があるが、この時はベルリン公演中。で、東京宝塚劇場公演のみの出演だった。

 貴城けいさんが演じる、等身大に生きるムジャヒドの懸命な姿には、誰だって、ふと心和ませて笑みを誘われてしまう。ムジャヒドの役作りをするに当たって、貴城けいさんはいつになく構えずに自分をどんどん出していったという。

「正塚先生は、周りから何を言われても迷わずに先生自身を信じろ、とおっしゃいます。役の解釈には正解がないと思いますが、まず演出の先生の意図する人物に近づくことが課題です。お稽古してきた役づくりを信念持って貫ければいいですね」
そう話す貴城けいさんの言葉には、男役を追求してきたキャリアが生きている。

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