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-バックナンバー- 2002年7月号

 阪急清荒神駅から参道を15分ほど歩けば、そこは新緑の山々に囲まれた清々しい境内。鉄斎美術館の正面から眼下を望めば甲山が美しい姿を見せています。
 5月15日から開催されている「鉄斎名品展−茶の美術−」は文人が嗜んだといわれる煎茶をテーマに中国の茶祖・陸羽にまつわる書画や鉄斎が絵付けした茶道具など全108点が3回にわけ展示されています。中国と日本で水墨画を学び、現在暁墨会を主宰し西宮と神戸で水墨画を教えている王暁さんと美術館を訪ね、中国と日本が共有する煎茶道にみる文人の世界を娯しみました。

会期 〜8月11日(日)
月曜日休館 開館時間:午前10時〜午後4時30分(入館は4時まで)
入館料:一般300円、 高大生200円、 小中生100円
(老人、 身体障害者手帳提示の方は各々半額)
宝塚市米谷字清シ1 清荒神清澄寺山内 TEL0797−84−9600


日本人のイメージとは違う鉄斎

 私は日本に来る前に中国で東洋美術を勉強していましたので、鉄斎のことは学びましたし、書画を観たこともありました。型にはまらない迫力のある絵は今までの日本人のイメージとは違いました。
 中国では水墨画と漢詩は一体となっていて水墨画を学ぶには必ず書の勉強もしますから、漢文で書かれた鉄斎の賛には関心があるのですが、日本では近代以降、絵と書は別々になっているようですね。そして学校の授業でも漢文がなくなっているのは残念なことです。
 煎茶の茶席に掛けられたという中国の文人、鄭てい板はん橋 きょうの詩を書いた竹製の対聯(1回目の展示)などを見ても鉄斎の書は彼の影響を受けたのではないかと思います。
 私も鄭板橋の書が好きなのですが、中国でも異色といわれルールを守らない独特の字を書く文人です。鉄斎と共通点があるのかも知れませんね。
 画ではやはり鉄斎にしか描けない独自の世界を確立した晩年の作品に圧倒されます。様々な技法を吸収しようとした若い頃の作品とは重みがちがいますね。
 鉄斎の作品は中国にも行ったことがあると伺いましたが、その時、展覧会に言葉を添えられた水墨の大家、李り可か染せん氏は私の師、高こう冠かん華か氏と同時代の方です。
 鉄斎は門下に入らず独自の画法を会得した方ですが、中国ではいつまでも師匠と同じ絵を描くことは評価されません。私もある時期に先生から「いつまでも私と同じ絵を描いているのならあなたがいる意味はありません。目標を高く持って私をこえなければ」 と言われました。門に入るのは易しいけれど出るのは難しいことですから、門下に一切こだわらなかった鉄斎がうらやましいです。
今回の茶の美術では鉄斎が尊敬したという中国では有名な茶祖陸羽や文人蘇東坡に関する書画に加え鉄斎が絵を描いた茶托や瓢箪の杓など珍しい作品も展示されていて興味深く拝見しました。最近は大作をあまり描いていなかったのですが、展覧会を観て描きたくなりました。

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