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-バックナンバー- 2002年12月号

 中国ツアー公演を終えて宝塚に帰って来た新専科の初風緑さんが、 11月22日から始まる星組公演 『ガラスの風景』 『バビロン』 に出演する。 初風緑さんが宝塚大劇場公演に出るのは昨年の2月以来なので、 本当に久しぶりだ。 もちろん、 その間、 初風緑さんはたくさんの舞台に出演している。 月組東京特別公演 『プロヴァンスの碧い空』、 梅田コマ劇場公演 『桜祭り狸御殿』、 月組東京宝塚劇場公演 『ジャズマニア』、 星組東京宝塚劇場公演と中日公演 『花の業平』 『サザンクロス・レビューU』、 そしてディナーショー 『Magnitude21』 と宝塚バウホールでの初風緑コンサート 『愛・舞・魅』 など。 特にバウ・コンサート 『愛・舞・魅』 は初風緑さん一人で舞台を務めた意欲作である。 それからチャリティー・コンサート 『心は地球をかけめぐり』 に特別出演し、 9月13日から10月2日までは上海市の上海大劇院、 北京市の世紀劇院、 広州市の麗江明珠歌劇院で開催された第2回中国ツアー公演 『蝶・恋 (ディエ・リエン)』 『サザンクロス・レビュー・イン・チャイナ』 に出演して、 宝塚歌劇の魅力を大いにアピールした。
 こうして振り返ってみて分かるのは、 初風緑さんが新しい芝居の台本を開くのは約2年ぶりだということ。 宝塚歌劇は特別な場合を除いて宝塚大劇場公演が初演だから、 2001年1〜2月の星組宝塚大劇場公演 『花の業平』 以来ということになる。 こんなことは組に所属するスターには起こらない。 そこが新専科制度のおもしろいところであり、 久々の男役づくりに直面している初風緑さんからは、 興味深い言葉が次々と飛び出す。
 「私が演じる大学教授クレマンは、 物語のキーポイントになる役で、 年齢的には自分より少し上の落ち着いた大人の男性です。 自分らしさを出しながら、 クレマンという人物を深く掘り下げたいと思うと、 これが非常にむつかしい。 しばらくショー的なものだけをやっていたので、 男役の台詞をしゃべることに照れてしまうんです。 その照れをなくすことからスタートしなければなりませんでした。 私はわりと不器用なところがあって、 下級生の頃は家の中でも役のテンポで歩いて生活しないと自分が納得する役づくりができなかったんですよ。 そういう状態から10年以上舞台経験を積み上げてきて、 やっと勘が働き計算もできるようになっていたのに、 また元に戻ってしまった感じがしたことも驚きでしたね。 芝居は歌やダンスのように一人でレッスンするわけにはいかないとしても、 せめてもっと小説などを読んでおけばよかったと反省しています。 でも、 こういうことに気付くのも新専科だから
。 組に所属したままだったら、 果たして今の初風緑が存在しているかどうか。 次の舞台が必ず用意されているという組所属の恵まれた状況に私自身、 甘えがなかったとは言えないですから」
 そう話してくれる初風緑さんだが、 新専科に移籍したばかりの頃は、 明日から何をしたらいいのか、 とまどう気持ちが強かったと言う。 この次はいつ、 どの組に、 あるいはどんな舞台に出演できるのか、 新専科生の誰もが全く分からない状況だった。
「私は結果的にまだ外部出演をしていないんですが、 ある時、 外部の舞台を経験した人と廊下で擦れ違ったとたん、

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