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-バックナンバー- 20001年7月号

 新人公演の最終学年に当たる今年、 オープンしたての新劇場で、 新人公演の長と主役を務めた大和悠河さん。 東京宝塚ビルの中にある新東京宝塚劇場は、 2069席。 舞台の広さは大劇場と同じだが、 舞台袖の形や衣装部の場所などがちがっているし、 2階の客席が前方へより深くせり出しているため目線も高めにする必要がある。 初日はセレモニーもあって、 楽屋入りしてから終演まで新しいことづくめでめまぐるしく過ぎ、 緊張したそうだが、 一息つく間もなく新人公演の稽古が始まった。 「これまでは大劇場でやったものを東京にもっていく形でしたが、 新劇場で初演、 しかも学年の長で下級生をまとめなければいけない。 お稽古の段取りも、 新公当日までの力の配分も自分たちで決めて行くので、 責任重大でした。 プレッシャーも感じましたね」
 と言う大和悠河さんだが、 厳しい局面はこれまでもいくつかクリアしてきた。 入団したのがあの大震災の年なのだ。 よりによって音楽学校の卒業試験がある朝だった。 「すごく気合いを入れて起きたら、 グラッときて」 と、 3年前の取材で話してくれた。 卒業文化祭は急きょ、 バウホールから客席が約2倍の大阪梅田のシアタードラマシティに変更になったが、 たった2週間の稽古で主役を演じ切った。 初舞台を踏めるかどうかもわからない不安の中で、 集中力を見事に発揮した結果である。 新公初主役の時も 「今振り返ってみると、 当時は初舞台から2年目だったので、 本番はとにかく無我夢中の内に幕が降りていました」 と言うが客席で観るかぎり、 大和悠河さんはエネルギーに溢れて光り輝いていた。
 大震災の年に生まれた赤ちゃんが今年、 小学生になった。 7年という年月は、 決して短くはない。
「私もこれから、 もっといろんな色を出せるように挑戦していくつもりです。 これまではありがたいことに二枚目をいただいてきましたが、 『ゼンダ城の虜』 の新公で悪党のヘンツォ伯爵を演じた時、 自分なりに楽しむことができたんです。 実は濃い役とか三枚目も私らしかったりするんじゃないかと。 白いイメージの役にも、 いろんな白があると思うので、 さまざまにアレンジできるようになりたいです。 3月にシアタードラマシティ公演 『Practical Joke』 で演じたトラブルメーカーの映画俳優デイビット役は、 久々の三枚目。 自分の壁を一枚破れた気がしたので、 これからは何でもできるぞというところを、 見ていただけるようにがんばります」
 キムタクと一緒に出ているコマーシャルの反響が大きい。 テレビの仕事は、 宝塚の男役をどの程度出すか、 頃合いがむつかしい。 とりあえずやってください、 と監督に言われて、 男役っぽく演じたら、 それがよかった。 テレビの歌番組では、 大劇場の空間を埋めるスターのスケール感が邪魔になることもある。 いつも通り踊っていると、 画面からはみでるので小さく踊ってください、 と言われた。 カメラに目線を送ることもテレビの仕事で初めて経験した。 今後は何をアピールしていきたいですか。 「自分の中の、 まだ出し切れていない部分を。 徹底的にキザな大人の男役は、 まだ恥ずかしがる自分がいて、 出せていません」
 大和悠河さんの思いは、 やはり大好きな宝塚の舞台に戻る。

インタビュアー
 名取千里(なとり ちさと)

  (ティーオーエー、日本広報学会会員/現代文化研究会事務局
  /宝塚NPOセンター理事
  主な編著書
  「タカラヅカ・フェニックス」 (あさひ高速印刷)
  「タカラヅカ・ベルエポック」(神戸新聞総合出版センター)
  「仕事も!結婚も!」(恒友出版)
ーTAKARAZUKA INFORMATIONを見るー

 

 

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