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-バックナンバー- 2001年12月号
 
通天晩秋図(70歳代)

会期 〜12月14日(金)
月曜日休館
開館時間:午前10時〜午後4時30分(入館は4時まで)
入館料:一般300円、 高大生200円、 小中生100円
(老人、 身体障害者手帳提示の方は各々半額)
宝塚市米谷字清シ1  清荒神清澄寺山内
TEL0797−84−9600

 境内にある二本の大銀杏が見事に色づき紅葉狩りが楽しめる清荒神清澄寺。その一角に佇む鉄斎美術館では、鉄斎を敬愛し作品の蒐集に尽力された第37世坂本光浄和上の三十三回忌と、その遺志を継ぎ美術館を設立された第38世坂本光聰和上の七回忌の追善として秋季特別展「鉄斎 万里の路を行く」が開催されています。最後の文人といわれる鉄斎は万巻の書を読み、日本各地を自らの足で歩き、目で見、その風景を心に刻みました。今回は現在日本で、日韓友好を願って、ユニークな芸術活動「ライフマスク2002」を展開している金明姫さんと鉄斎の行った万里の路を辿りました。
   
▲金明姫・韓国ソウル生まれ。 1975年来日、 日本で水墨・書・南画を、 米国で版画を学ぶ。 85年京都で初個展。 以後アジア・北米・欧州・ロシアなどで展覧会多数。 99年から日韓共同開催のサッカーW杯に向け2002体のライフマスク制作に取組む (P28参照)。 作品は2002年6月に韓国と日本で同時展示される予定。

迷いのない筆に鉄斎の生き方を感じる

 私は韓国では音楽をやっていたのですが、和紙(韓紙)と墨が好きで、日本に来てから日本画や水墨画、書、南画を勉強しました。今は和紙にいろんな材料を使って主に人物を描いていますが、黒は墨を使います。滲みやかすれ、墨は生きているようです。
 現在2002年に向け多くの人の協力を得て日韓で制作しているライフマスク(人の顔を型どった造形)は手漉きの杉原紙と韓国・龍仁の韓紙を使って作り上げています。
 鉄斎の絵は来日してから展覧会でも観たことがあり、その存在はよく知っていましたが、この展覧会のテーマになっている「万里の路を行く」という鉄斎が日本各地を人と出会いながら九州から蝦夷まで自分の足で一歩一歩旅して歩いたとは知りませんでした。
 風景に出会って何かを感じる。素晴らしいことですね。その時々にやりたいことを真剣にやれば、その積み重ねはいつか結実します。
 私も今ライフマスク制作に全力を注いでいますが、それが未来の自分につながっていくと思うんです。鉄斎も旅の後20年、30年も経ってからその風景を迷いのない筆運びで描いている。ラフに描いているのに色もタッチも確かです。富士山や瀞八丁、耶馬渓など実在の場所であっても実際にはない山や岩の形に存在感があるのは、鉄斎が苦労して万里の路を歩いて自分の目で見、心の中に蓄積しイメージを作り上げていったからでしょう。
 私は60歳以降の作品に力強い鉄斎らしさを感じますね。世に見せるために描くのではなく自分のために描いているのがわかります。
 この美術館には初めて参りましたけれど作品が1000点もあると伺って驚きました。凄い文化財産ですね。鉄斎の名は多くの人に知られているのですから宝塚に鉄斎美術館があるというアピールを宝塚市はもっとすればいいと思います。
 人間が後の世に残せるもの、それは文化ですから。

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